[新規開業トリマーさん向け] 大型犬するかどうか

大型犬を受けるかどうか

 

新規独立開業するときに決めることのひとつとして、営業の内容です。

トリミングの他にも物販はするかどうか、送迎はするかどうか、猫はするかどうか、ホテルはするかどうか、そしてトリミングの中で大型犬をするかどうかも迷うところの一つです。

筆者のお店は大型犬をやっています。
今まできた大型犬は、セントバーナード、ニューファン、ピレ、シェパード、ボルゾイ、秋田、バーニーズ 、スタンプー、ジャイアントシュナ 、あと多いゴールデンやラブなどです。

今までの経験から大型犬をするために必要な設備や心がまえを踏まえた上でのメリットデメリットを挙げてみたいと思います。
これから開業して大型犬をするかどうか迷っていらっしゃるトリマーさんは是非参考になさってください。

たった一人での美容はかなり無理がある

大型犬は皆さん学校や下積み時代のお店でトリミングしたり触ったことはあると思いますが、体重は20キロから大きくて50キロ近い子もいます。犬種によってサイズは様々ですが一つ言えることはヒトリマーさんだと大型犬は無理だと思います。

その日だけでも助っ人やヘルプが見込めるのであれば美容作業は可能ですがたった一人となるとかなりハイリスクです。まずお勧めしません。

その理由として、小型犬と大型犬の決定的なサイズや力の差があります。飼い主さんがうちの子はおとなしいですと言っても、実際はガチガチに訓練が入っているシェパード以外はガチャガチャだと思っても良いくらいです。慣れたお家の環境でのんびり過ごしているのとは違い、慣れない場所で高いところに乗せられて身体中を触られ、爪を切られたり耳をほじられたりと嫌なことをされるのは、もちろん逃げれるなら逃げたいです。当たり前の感情ですよね。
プイっと首を背けたり、ポイっとテーブルから降りようとしたり、ドアが開いた隙間を狙って突進したりちょっとした行動でも小型犬と違ってトリマーが体を持っていかれるほどの馬力が大型犬にはあります。大型犬をアームにかけて気を抜いたすきに犬が飛び降りてテーブルごとひっくり返して引きずるほどの力があるのです。

テーブルでのブラッシング、爪切り、耳掃除、ドライング、カット、またシャンプー台への移動、シャンプー台へ乗せる、洗う、右手でシャワーを持って左手でパッティングする、もちろんその間は犬をシャンプー台にリードで固定していないと飛び出します。すべての作業に一人のトリマー の腕二本では足りないのです。大型犬はそれぐらい押さえたり、保持したりするパワーと神経を全集中しないといけないのです。

まず一人ではない事

その条件をクリアできて初めて次の条件をクリアできるか検討しましょう。

設備は準備できるか

大型犬用設備
  • トリミングテーブル
  • シャンプー台
  • バリケンネル
  • ブロアー
  • チョークチェーン

①トリミングテーブル

当たり前ですが美容するのはテーブルの上です。大型犬が乗るサイズが必要になってきます。大体1000センチ前後の長さと60センチ程の幅があれば大丈夫です。高さも油圧や電動で上げ下げできれば理想的ですがたまにしか使わない大型用のテーブルにそこまで投資するのも難しいですね。日頃は使わないので収納しておく事になるので折りたためるのは必須ですね。

 

②シャンプー台

小型犬用のシャンプー台では大型犬は洗えません。シンクに入ることはできてもシャワーをかけるとお湯が全部外にこぼれてしまったり、お腹の底や犬をシンクで方向転換できないために反対側のボディのシャンプーが完璧になりません。
最低でも横幅が100センチ前後のものが必要です。

筆者のお店では超大型犬も来店するので120センチのものを使用しています。

 

また、ドアが横についているものは犬の上げ下ろしが安全かつ楽なのでお勧めです。

③バリケン

大型犬を休ませる場所、送迎するのに車に設置する用に必要です。小型犬よりも時間がかかるので間で犬に休憩をさせたり待機させる場所が必要です。

扉付きの部屋の様にフリーでおいてあげれるスペースがあれば理想ですが店内ではなかなかその様なスペースを確保するのは難しいです。またリードでつないで壁際に待機させていても、隣に犬や人が通ったときや犬をむき出しの状態で放置するのはどの様な事故が怒るか予測不能なので大変危険です。バリケンネルに入れておけばリードが切れての脱走や事故、怪我の可能性をかなり下げれます。また犬の本能からも囲われたハウスにいる方が安心して過ごせます。

サイズ的には一般的なゴールデン、シェパードクラスなら400、超大型になれば500のバリケンのサイズは必須です。

 

④ブロアー

昔はペッカリーもしくはK9が主流でしたが最近はアメリカ、中国製の安いものや国内でも手ごろな価格で色々出回っているのでお値段とクオリティのバランスで選ぶと良いかと思います。

スタンドドライヤーやアームなど風量の高いものだと1800w〜2000wクラスの風量が出ますが、使う部位によっては角度的に風が当たらないところがあります。大型犬をスタンド一本で乾かすのはかなり効率も悪く犬にも負担がかかるのでハイパワーのドライヤーとブロアーが必要かと思います。時間がかかれば利益率も下がるので設備投資という意味でも大型犬をするなら必要かと思います。

⑤チョークチェーン

飼い主さんからは首輪やハーネスをつけて渡される事が多いです。中には訓練を終了しているワンコなんかはチョークチェーンを常用されている事が多いと思いますが、そうでない大型犬には預かったら必ずチョークチェーンをはめて移動や美容中の保持をする様にしましょう。大体55〜60ぐらいのステンレスのチョークチェーンで大体の大型犬は使用できると思います。ピレやセントなど頭部の大きなわんこにはそれ以上のサイズが必要になってきます。きっちりとコントロールするためにも耳のすぐ後ろにチェーンをかけて行動の制御を行える様にチェーンの使い方も学ぶ必要があります。またそれにつなぐ革製のリードも用意しましょう。

それでもやりたいかどうか

リスクが多い大型犬

以上の様に基本的に大型犬は設備にもお金がかかり、作業も時間がかかります。そして何より噛まれたり暴れたりしたときにはトリマーが大怪我を負う事もあり、また制御できなければ逃してしまう、犬同士の喧嘩や怪我の危険性なども高まり商売の観点から言えばかなりハイリスクです。
筆者も夫(トリマー)も今までに大型犬の飼育経験があります。シェパード、バーニーズ 、秋田を飼いました。なので大型犬は大好きです。重要なのはここだと思います。大型犬のリスクを背負ってでも大型犬の美容をしてあげたい、大型犬をヨシヨシしたいと思う人は採算度外視覚悟で受けても良いかと思います。スタンプーなどカットのある大型犬は、ベーシックのドライングが終わった時点で犬も人もヘトヘトです。そこから力を振り絞って活力をふり立たせてカットに入ります(笑)
少しオーバーに聞こえるかもしれませんが大型犬のトリミング犬種は本当に一日仕事になります。
でもお客さんがお迎えにこられてふわふわになったワンコを「キレイー!」といって抱きしめてワンコも尻尾プリプリでいる姿を見ると小型犬とは桁違いのやりがいと嬉ししさがあるのも大型犬ならではだと思います。

開業される際の大型犬をするかどうかの選択の参考になれば幸いです!

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